2026年03月

 2月は28日間と短い一か月でしたが、2月8日は衆議院選挙の投票に雪が舞う中、投票所まで歩いたのに、ほぼ2週間後の23日は春一番で、東京としては観測史上初の2月の夏日(25℃超)という凄まじい気温上昇で、皆さんついていけずに体調を崩す方も多数おられました。春一番などフェーン現象による急な気温上昇寒の戻りの「三寒四温」の季節はまだしばらく続きますので注意が必要です。

 「木の芽時には調子が悪い」といわれるように、この急激な陽気の変動には自律神経がついていけません。東洋医学では、春の陽気肝気を乱し、体内の気が統率を失い、上へ昇って下半身と上半身のバランスが悪くなり、足腰がだるい一方、肩から上は詰まった感じで、肩・首の凝り、頭痛、さらには眩暈・耳鳴りを引き起こしたりします。

 この場合当院では、肩首の凝りは散鍼などで散らすように治療しますが、に関しては後頸部だけでなく頸動脈のある前頸部も大事。頸動脈には頸動脈洞という圧受容器があり、ここを指圧すると圧迫により血圧が高いと錯覚し、血圧と脈拍数を下げようとします。その反応が副交感神経優位に働き、循環系の調整だけでなく、不眠症などの睡眠障害、便秘や下痢といった消化系障害などの自律神経全般の調整にも役立つので、耳の下から頚の中央に走る胸鎖乳突筋の中央部をその奥の頸動脈ごとマッサージするのは非常に有効です。

 上下のバランス補正に関しては、上実下虚の基本穴である「足三里」とともに、足の1・2指の間の付け根にある「太衝」や膝窩横紋の内端にある「曲泉」という肝臓強化のツボを刺激し、下腿を指圧して上昇した肝気を下に下げます。皆さんも入浴中などにふくらはぎをせっせと揉みほぐしてみましょう。

 さて、フェーンという言葉はもともとドイツ由来で、本場ドイツでは、フェーン風が吹くと精神不安で、自殺者が増え、交通事故が多くなるとの統計もあります。我が国でも春の陽気による肝気の乱れは、精神的には能動的な精神活動のコントロール不能という形で現れます。これがマイナスに働くと、やる気がでず、ボーとして物事に集中出来なかったり、鬱っぽくなったりします。これには生活リズムを整え、できるだけ太陽の光を浴びて、シャキンとさせましょう。睡眠中に脳内に分布するメラトニンは目からの太陽光刺激でパーっと分解し、意識の覚醒とともに自律神経のメリハリとなり鬱脱出です。

 逆にプラスに働くと、古医書にある「肝傷られれば怒する」との記述にあるように、イライラして怒りっぽくなったりするわけです。社会的にも、車の危険運転や、計画性のない突発的暴力事件、欲望の抑制がきかない痴漢や露出狂などの軽犯罪が目立ったりします。なにげに夫婦喧嘩も一番多くなる時期ですが、この怒るという感情は拗らせれば周囲の環境を劣悪にし、じわりじわりと健康を蝕みます。皆さん是非、精神修養の良い機会だと思って、怒りと行動を直結させずに、ワンテンポおいて、深~く深呼吸をして、冷静に慎重に行動してみましょう。怒りを巧くコントロール出来ると、生産的なやる気につながり、心の平穏と共にと幸せになれるはず。鍼師はすでに、「他人(妻)は思い通りに成らない」と達観し、自分の意地やプライドを見直し、多様な価値観を受け入れ、内観により常に冷静に自己分析するもう一人の自分を創ることに成功し、聖人のような道を歩いています(ウソ)。万が一余裕がない人に、理不尽にイライラをぶつけられたとしたら、「あの人は春に翻弄された可哀そうな人」と同情したり、「ラッキー、これを乗り越えて魂をワンランクアップ!」と考えたりして乗り切りましょう。それでも難しければ、軋轢が生じる人との間に距離を作りましょう。鍼師にも昔、心の平穏のために妻と500kmの距離を保っていた時期があったなぁ~(遠い目)。

 2月は、ミラノコルティナ冬季オリンピックが開催されました。選手の皆様には申し訳ないのですが、大して注目も期待もしていたかったのが、連日のメダル獲得となる大活躍で随分楽しませていただきました。活躍以上に素晴らしかったのが、自分に結果が出なくても、国を超えたライバル達と結果を称えあう雰囲気があったことです。本当に良いオリンピックだったなぁと、鍼師もほっこりさせてもらいました。

2026年02月

 年明けからゆったり過ごしていたら、3日朝は雪が積もっていて吃驚したり、妙に暖かい日が続いたと思ったら、反転して寒気が流れ込んで、グッと冷え込んだり、寒暖差の激しい一か月でした。風速1mで体感温度は1度下がるそうで、天気が良くても風が強いため寒いと感じる日が多かったように思います。

 インフルエンザも昨年11月の流行から一度収まったものの、今年に入りB型の流行が始まっており、2回罹患する人も居られるようですが今後も注意が必要です。積極的なガード(予防)として一番予防効果が高いのは手洗いですので、帰宅時には忘れずに。R-1ヨーグルトなども効果的ともされますが、生薬「桂皮(けいひ)」(食品にも使われるシナモンやニッキ)も有効です。お試しあれ。

 東京の1月は雨天極わずかで、乾燥は酷く、洗濯物は早くパリパリに乾くものの、皮膚は乾燥しすぎで掻痒症になる方も多かったです。皮膚の状態は、綺麗好きほど荒れるのですが、痒くなって「汚れや垢は、こそげ落としてピッカピカだ〜」とゴシゴシ洗うのは実は逆効果なのです。肌に関してはその垢こそ大事。人体の表面を覆う角層は、死んだ細胞(=垢)といえる角質細胞でできていて、その角質細胞の間にが、 NMF(アミノ酸保湿成分)やセラミド(細胞間脂質)といった保湿に役立つ成分が、まるでセメントでレンガブロックを固定するかのように埋まっていてコーティング層となり、水分を逃さないようにするのです。この角質層は強くこすると24時間回復しません。風呂好きでも肌は軽く表層の油分を手で洗う程度で垢も大事な身体の一部と考えて、入浴時は優し〜く、大事~に扱ってあげましょう。内面から肌を助けてくれるものに、薏苡仁「ヨクイニン」という漢方薬(ハトムギ粉末)があり、これも有効です。ツボとしては、肩を水平の高さに外転して、肩の前にできる窪みに肩髃(けんぐう)というツボがあり、美肌のツボとしてお薦めです。

 今月は日本人の罹患する病で最も多い病気、花粉症にもふれておきましょう。すでにそれらしき症状を訴えておられる患者さんもおられますが、本格的にはこれからです。一般的な予防としては花粉のばく露を防ぐ、ということになりますが、外出にあたっては花粉情報に留意し、マスク・メガネなどの花粉症グッズを着用して、できる限り花粉をあびないようにすることが必要です。帰宅時には、花粉除去と鼻粘膜の炎症に対する「湿潤療法」的観点から、鼻うがいも有効です。生理食塩水(0.9%の食塩を溶かした蒸留水)を作って挑戦してみましょう。

 花粉症に対するツボ療法は、メガネの鼻あてが当たる所にある「鼻通」というツボや正中線上で髪の生え際から1〜2㎝入った所の「上星」というツボなどが効果的。これらのツボはズーンと強めに押してパッと離すという刺激を5〜10回与えるだけでも鼻水症状の軽減を期待できます。根本的には、東洋医学では、花粉症が悪化する体質「水毒(水滞)」を改善することをめざします。「水毒」とは、水がバランスよく身体に分布せずに、一部の部位に停滞した状態をさします。この状態の人が花粉などの刺激をきっかけに余分な水分が鼻水や涙という形を取ってあふれ出て来るという現象なのです。これを改善するには、冷えを取り、余分な水分の排出を促し、かつ血液やリンパの流れを良くするということです。また、腸内環境の改善は、免疫機能の正常化・強化に繋がります。年末年始で食べ過ぎて、良くない食習慣を引きずっている方は、食事の量を減らし、食後眠るまでの時間を3時間確保するなど努力して、絶好腸にもっていきましょう。

 現代医学的には舌下免疫療法があります。要はだんだん濃度を濃くした花粉エキスを舌下に垂らして慣らしていく「減感作療法」ですが、「医師の指導のもとで」と仰々しくせず、「減感作療法キッドを薬局で」とかで普及させられたら医療費の削減になるのにと思っちゃたりします。

 さて、2月は冬季オリンピックが楽しみだと思っていたら、衆議院解散で総選挙にもなり、何となく落ち着きません。ついついSNSやYouTube動画を見て夜更かししちゃうかも?こうしたことで生じる睡眠不足は、脳の疲れに直結しているだけでなく、免疫機能を低下させ、万病のもとである慢性炎症を起こりやすくします。脳には日々老廃物がたまりますが、睡眠時老廃物の処理速度が起きているときに比べて1.6倍にもなります。寝る時間が少ないと老廃物がたまり、将来の認知症リスクが上がります。また、記憶の定着に関係する海馬は、寝不足により傷つき委縮します。さらに、若々しい細胞をつくる指令を出す成長ホルモンは、睡眠時に大量に分泌され、とくに入眠後3時間の睡眠の質が成長ホルモンの分泌に関わります。良質な睡眠は脳に大事。食薬として脳の疲労と若返りのため、オメガ3脂肪酸を多く含む青魚をとりいれ、早寝早起きで頭脳明晰といきましょう。

 余談ですが、先日、患者さんの身内の方にご不幸があったものの、火葬場の関係で2週間葬儀がずれ込んだとのお話をお聞きしました。葬儀自体は新型コロナ流行から小規模化していく傾向で費用も下がってきていますが、関東、特に東京23区は深刻な火葬場不足で死者数の増える冬場(12月〜3月)は1週間以上待つ「火葬待ち」が常態化しているとのこと。追加でかかる費用は、1日あたり約1万〜2万円(安置料+ドライアイス)が相場で長期間の火葬待ち(10日以上など)だと防腐処理などのエンバーミング(15万〜25万円程度)が必要になることも。頭脳明晰状態でついつい計算しちゃいました。死んだ後もお金がかかる、あぁ、世知辛い(泣)。

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