●はじめに
9月は第2週の2日ほど涼しかった後の猛暑再来が、バテバテ感を余計強くしたような感じがしましたが、お彼岸過ぎて一転し、肌寒い日もあり、日もかなり短くなってきて、秋の到来を感じます。10月もまだ真夏日はあるようですが、さすがに猛暑日はなさそうです。先月も触れましたが、秋は肺系(呼吸器系統)が影響を受ける季節で、これからは、肺を強化する「中府」「肺ゆ」、免疫強化の「大椎」といったツボを刺激したり、初期の風邪のうちから発汗を促して解熱につなげる「葛根湯」や「麻黄湯」をうまく活用する時期です。もし備えとして入手されて、使い方に迷ったら鍼師にご相談ください。
●ワクチンについて
10月から、予防接種法に基づく定期接種(65 歳以上の方対象)が始まります。うちの嫁にも接種案内が来ました。インフルエンザだけでなく、新型コロナも定期接種になるようですが、先日定期接種に使われる5種のワクチンの一つであるレプリコン(自己増殖型)ワクチンという次世代mRNAワクチンを製造販売するメーカーの社員グループから「私たちは売りたくない」という暴露本というか警告本が出版されました。現在amazonでもプレミアが付いて入手困難になっていてますが、鍼師はkindleで読みました。最近のコロナ感染症の重症化リスクが下がっていることと、従来のmRNAワクチンも含めたワクチンの副反応リスクを天秤にかけて、慌ててワクチン接種せず、よーく見極めてからの方がいいなと考えています。鍼師も嫁も打ちませんが、患者さんにもお勧めしませんね。
●映画と感動と秋の心理
先日、待望のエイリアンシリーズ最新作が公開されたので、観に行ってきました。嫁さんが、興味なさそうに、仕方なさそうに付き合ってくれまして、鍼師的には満足の出来でしたが、嫁さん的には「…なんの感動もなかった」って…。「嫁ちゃん、エイリアンは、ハラハラドキドキを楽しむ作品だからね。エイリアンと人間の間に友情とか愛情とか芽生えて感動するとかないから〜」と心の中で叫びました。感動する映画が良いのはこれからの秋の季節です。昔から、人の霊魂を魂魄(こんぱく)と言いますが、魂と魄はそれぞれ異なる感情をもたらす精神エネルギーで、魂は能動的な精神エネルギーで肝臓に宿り、魄は受動的な精神エネルギーで肺臓に宿るとされています。このため、秋は肺が影響を受け、受動的な精神活動である感受性が高まり、ナイーブになります。感受性がいい作品に繋がると「芸術の秋」になり、味覚が高まると「食欲の秋」になります。また、人間関係では「恋愛や失恋の秋」も盛り上がって、楽しいことはより楽しく、哀しいことはより哀しく感じられます。この時期は、何か辛いこと、落ち込むことがあっても、「秋が私をそうさせるのね」と責任転嫁したり、感動する映画で涙をたくさん流してスッキリするのが、精神衛生上も肺機能的にも有効です。ということで、オススメ映画があったら是非教えてくださいね。
●お値打ち野菜ランチ
以前から教えてもらっていたお店で、先日やっとランチを頂くことが出来ました。というのもこの店、月に3日しか営業してないので、なかなか時間が合わず…(泣)。野菜好きの嫁さんには絶賛のお値打ちランチでしたので、皆さんにもご紹介。
第2〜4水曜日の11時半から15時まで営業。予約がオススメです。
パリオリンピックでは日本人のメダルラッシュで獲得数世界3位となり、江戸川区の星・関東一高校が甲子園決勝で惜しくも破れるも熱戦を繰り広げ、残すはパラピンピックと、熱い夏が終わろうとしてます。熱い夏と共に暑い夏も終わればいいのに、先日ニュースで暑さは「10月まで」ではなく「10月も」と言っていて、マジか、と愕然としております。
7月後半から8月前半の暑さでピークは過ぎたかと思ったら、中盤以降にも2度目のピークが来たような感じで、その後も長引きそうな暑さは、じわりじわりと心身を消耗して夏バテに至りそうです。ゴールデンウィーク以上に長期の盆休みとなった方には、職場に戻っても、やる気が出ず、睡眠は浅く、食欲も減退、という人も居られたのではないでしょうか?
夏の高温下では、体温維持のために必要なエネルギーが少なくなり、基礎代謝が下がります。エネルギーが少なくて済むので、食欲が落ちて食べる量が減りますが、エネルギー量は問題ないものの、ビタミンやミネラルといった栄養素の必要量はそんなに変わらないため、栄養不足になります。さらに素麺などのあっさり食事を続けると、その傾向はさらに強まります。また、大量にかく汗の成分には、ビタミンB1やカルシウム、マグネシウムも含まれ、失われた栄養素を摂取していかなければなりません。土用の丑の日に鰻を食べる習慣は江戸時代に始まったものですが、ビタミンやミネラルを豊富に含む鰻は夏バテの食材として理に適っています。その他、アッサリとしながらも栄養補給になる「冷しゃぶ」などポン酢で食べるのもオススメです。肉に含まれるアルギニンは成長ホルモンの分泌を促進することで、体のダメージを回復する効果を高め、「活力」に関わる滋養強壮成分です。お酢の酸味が唾液や胃酸の消化酵素分泌を促し、含まれるクエン酸には乳酸を分解して疲労回復を高めたり、最近は肝臓の機能を高めて脂肪肝や肝癌発生を抑制する効果が盛んに研究されているようです。
食材と共に消化能力を維持するための胃の養生も大事です。まずは、しっかり空腹時間を作る事が大事で、特に夜寝る前の食事は控えることで胃は余裕を保てます。特に夕食と朝食の間を8時間以上空けると腸の大蠕動を促し、胃の機能不全を防げます。それでも暑さの影響で胃の運動不全になった場合、これに対するツボ療法としては、ファーストチョイスで「足三里」。胃酸過多気味の場合は「足三里」に代わって「陽陵泉(膝外側の大きな骨の下)」を、消化不良で下痢気味の場合には「百会」が有効です。漢方薬としては「六君子湯」。主成分の一つビタミンPが、「グレリン」というホルモンの分泌を促進し、食欲増進・運動能力アップにつながります。ストレスが胃痛にきやすい人は、胃が知覚過敏になっています。これには少量(胸やけしない程度)の唐辛子(カプサイシン)を長期服用するのが有効です。胃痛がなくなるだけでなく、過敏性大腸炎にも効きます。
今年は8月から台風が日本列島に上陸していますが、本来は9月が最も多く台風が上陸する季節です。台風による急激な気圧の低下では、喘息患者が急増しますし、うちの患者さんでも、赤道直下で台風が発生したと同時に息苦しさが出るという、ご本人的には大変有難くない、台風発生検知器のような能力?を持った方がおられます。台風と共に体調不良になる方は、呼吸器が弱い体質(もしくは状態)であると自覚して、関連が深い秋を見据えて準備しましょう。
本格的に秋の気配を感じ始めると、空気が急速に乾燥してきて、夏の多湿からすると体感的には心地よくなるものの、防衛を司る呼吸器系統(呼吸器・皮膚・粘膜)に直接影響が出て、鼻汁・鼻閉・喉の痛みを中心とする風邪も増え、また肌も乾燥して荒れ易くなり、腸の粘膜が乾燥して便秘になることもあります。首から肩甲骨内縁という肺に関係の深い領域にお灸の温熱刺激や乾布摩擦など、皮膚の刺激を通じて免疫力の強化を図り、肺系強化のツボ刺激として、中府(ちゅうふ:鎖骨外端の下・陥凹部の下3センチ位)や母指や人差し指の刺激を試みてください。
先日帰省した京都でジャガイモを沢山もらってきたら、どこかにヤモリが潜んでいたようで、妻と次男はキャーキャーと大騒ぎ。鍼師はヤモリは比較的好きなので、手づかみしたら、何を思ったか次男が飼うと言い出し飼うことに。島忠ホームズで買ってきたコオロギの生き餌を脅威の捕食でパクツク様を皆でジーと眺め、しばしの空腹でこやつの胃の養生は万全のはずやなぁと思う鍼師でした。
7月は、前半に気温が35℃に達し、やはり昨年より暑いなと。中旬梅雨らしい天候不良で気温が少し落ち着いたものの、後半は一気に暑くなり葛西近辺では初の38℃を記録しました(死ぬ)。26日からパリ・オリンピックも始まりましたが、地球の裏側でリアルでは深夜放送。8年前のリオ・オリンピックは睡眠削って応援しましたが、今大会は体力気力の限界を感じ、朝結果を確認する毎日です(無理)。
先日、往診先で急に足がむくんだ方がおられて、夏場には、特に高齢の方で、数時間から数日という短期間に急速に足がパンパンに浮腫むケースがあります。これは急性腎不全で、腎臓への血流が減少し老廃物がろ過されずに体に蓄積して腎炎を起こし、糸球体自体が傷付くことで腎臓の機能が低下し引き起こされます。腎臓への血流低下の一番の原因は脱水。だから夏場多いのです。血圧がそんなに高くないのに降圧剤を飲んでて低血圧になったり、頭痛等でロキソニンなどの非ステロイド系の消炎鎮痛剤を多用している人はさらにリスクば上がるので要注意です。とにかくマメな水分補給を心がけましょう。ちなみに、大量の汗に塩分などの電解質補給を怠ると、血中の塩分濃度を下げない反応として体が水分を拒否することがあります。自発的脱水といいますが、これも気をつけましょう。
腎臓に関しては、最近、フィットネスクラブでプロテインを摂取していて腎機能を損なうケースが報告されています(うちの患者さんにも一人)。腎不全の人が塩分とたんぱく質の摂取を制限することは常識となっていますが、逆に高齢者は低糖質・高タンパクが不老長生に良いという研究もあり、はてさて?現在のところ、吸収率の良すぎるプロテインが腎臓のろ過機能を超えて一気に腎臓に到達するから害なのでは?などと推測されていますので、たんぱく質は肉・魚・卵・大豆といった食品で摂るのが無難なようですね。
さて、今年もすでにエアコンなしで室内熱中症死亡のニュースが入ってきてますが、体力がなく、暑さに鈍感な高齢者はエアコンを活用すべきでしょう(嫌いな方も多々おられるとは思いますが)。特に熱帯夜が続く暑い季節は、脳をクールダウンしてから眠るのがおすすめです。やり方としては、部屋を涼しくして鼻で腹式呼吸です。脳の自律神経の中枢はちょうど鼻腔の上にあるため、鼻呼吸によって自律神経中枢が冷やされることで自律神経機能が回復し、また、吸う息の倍時間をかけて息を吐くようにすると副交感神経優位になり睡眠の質の向上につながります。
ただ、エアコンの影響を受けすぎるのも問題です。夏はもともと体内熱を放出出来るように皮膚の毛穴が開きがちで、寒さに対しては無防備で、冷房によりストーンと深部に冷えが進行してしまいます。
冷えが進行するとどうなるのか?まず、末梢循環の血行不良(東洋医学では「血虚」や「瘀血」)を引き起こし様々な神経・関節などの痛みの元になります。また余分な水分の停滞(東洋医学では「水毒」と呼びます)を引き起こし、頭痛・肩こり・腰痛・生理痛等が慢性化します。冷えが胃腸機能に及ぶと消化不良・慢性的な下痢・意欲の低下もおこります。冷えがちで低体温化した身体が常態化すると免疫機能低下からガンにもなりやすくなります。さらに、深く進行した冷え性には、身体を温める陽気と身体を沈静化する陰気の分離を引き起こし、(冷え)のぼせ・ほてりといった症状を呈するものもあります。赤ら顔でいつも顔に汗をかいてハンカチ・タオルが手放せない人、この状態が長期化すると、クモ膜下出血、脳溢血、心筋梗塞などに襲われます。まさに冷えは万病の元ですね。人間は頭が熱いと全身が熱いと錯覚してしまう生き物ですが、お腹や足の温度を手で確認すると、結構冷えていることがあります。きちんと確認して冷え過ぎによる内臓や自律神経の機能低下を防ぎましょう。
どうしても職場環境等で冷える場所から逃れられない人は、「夏から始める冷え性対策」です。日常生活では、第一に下半身浴+「三陰交」のツボ刺激を1分間。第二に「水毒」に対する食養生。ニガウリ・セロリ・ピーマン・グレープフルーツなど苦みのある食材で、身体の余分な水分を取り去るです。さらに積極的な対策としては、末梢循環を鍛えておく方法です。①冷たい水と熱いお湯を1分毎に交互に7回繰り返す「冷温浴」と②仰向けに寝て手足を垂直に上に挙げて2分間ブラブラさせる毛管運動(ゴキブリ運動)は効果的です。3ヶ月頑張ると体質が変わります。
冷温浴ではないですが、先日、京都の義父の付き添いで、京都下鴨神社の御手洗祭(みたらしまつり)という、御手洗池に素足を浸け、献灯して無病息災を祈る、という行事に参加してきました。京都のまとわりつくような熱い空気と池に浸かる人の多さから、さぞ温いんだろうと足をつけると、「つっ、冷た〜」と予想に反して冷たく頭も冴えました。行事を終え足を拭いてしばらくジーンと血が巡って心地よい。なかなかの体験でした。お義父さん(92歳)もまた一年無病息災だと思ってると、妻(長女)と義妹(次女)が「元気で死ぬときはポックリやで」「そうやポックリポックリ」と笑いながら死を強調する。それにつられて義父も笑う。「お義父さん、そこ一緒に笑うとこなんですか?」と微妙に思う鍼師でした。
最近、鍼灸やツボ関係の特集番組がいくつか放映されました(教えてくださった患者さんありがとう)。施術を受けた患者さんが体験的に効果を実感するのとは違って、数値や画像なので効果を客観的に説明できるのは良いことです。鍼師が一番やりにくい猜疑心の強い患者は「妻」ですが、録った動画をさりげなく流して理解を促す日々が続いております(笑)。
さて、自律神経が乱れる春の時期から、本来調整期間となるはずの5月の良い季節がちょっと微妙で、様々な不定愁訴が尾を引いたり、梅雨の前倒し的に神経痛を発症する方とかが多く見られた一月でした。
6月は梅雨入りですが、多湿のため、身体に水分が停滞し、熱が放散しにくく、「ジッとしていると寒いのに、動くと暑く」感じます。これに、梅雨寒や気圧の低下が加わると、関節痛や神経痛・古傷痛が目立つようになります。これは急激な気圧の低下で体液成分が変化することと、冷えにより体表の血管壁が収縮し、痛みの受容器を刺激することによって引き起こされる痛みで「気痛」と呼ばれます。応急的には温めることが一番です。
また、湿気は消化系統である「脾」に影響すると先月も書きましたが、吸収力も蠕動運動も低下し、お腹が張ってもたれ気味。尿も大便もすっきり出なくて急に下痢・腹痛を起こすこともあります。また、東洋医学の心身相関では、脾が弱ると心の変動は「思」に繋がります。「ハッと気づくと同じことばかり考えている」と、思考のループにはまり、思い悩んでどんどんネガティブになっていくという鬱まっしぐらです。東洋医学の原典「素問」には「思」の感情は「怒」で抑制できると記されていますが、伴侶が鬱っぽい時はわざと怒らせてみる?のも良いのかもしれません。鍼師の妻は気付いたら「怒」ってる気がしますが…。(鍼師が悪い?)
ともかく、消化器系統「脾」の強化には、ツボ療法としては、先月書いた「足三里」「中月完」「少海」の刺激を継続し、漢方薬では、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)が消化吸収を助けながら、余分な水分を取り除く作用があり、熱中症で多用する五苓散(ごれいさん)も水分代謝改善で効果的なので、持っておきましょう。その他、汗をかく機会を増やし、夏バテしない質の良い汗をかけるように準備もしておきたいですね。
食養生としては、利尿作用を高め水分代謝を改善するハトムギ、小豆、緑豆。脾胃を温めて、発汗を促すショウガ、ネギ、花椒が有効です。また、食べ方として、普段は胃に優しい暖かくて消化の良い食事を心がけて胃を休め、、何日かおきにエネルギー効率の良い、精の付く食べ物(鰻や焼き肉など)を食べるというのも良しです。鰻にはビタミンBやミネラルも豊富に含まれています。「アレ食べたいコレ食べたい」の食欲は「アレやろうコレやろう」の意欲に通じるので、食欲を落とさず、美味しい食事が継続できるよう養生しましょう。
先日、ある患者さんからオススメの鉄火丼専門店を教えていただき、家族で行ってきました。美味しかった。その方から、「奥様のご機嫌とりにいいですよ」と言われ、「え〜、じゃぁ、毎日連れて行かなきゃいけないじゃん」と思わず言いそうになった鍼師でした。