2024年11月

●はじめに

8月、ひょんなことから飼うことになったヤモたん(なんの捻りもないヤモリの呼び名)。その生き餌として、買って来たコオロギが、9月に大量脱走し、家の中のあちこちにコオロギが跳ね回るカオス状況に。騒ぐ家族に尻を叩かれ、ほとんど捕獲して収束しましたが…。10月の或る夜突然、タンスとテレビ台の裏から虫の音が〜。「逃げ残り、タンスの裏で、秋叫ぶ(byコオロギ)」。我が家の秋は、コオロギが届けてくれました(いらん!)。

その10月ですが、秋晴れ少なく、日照時間も短く鬱々として、精神的にもドヨーンと落ち込むことの多い天気で、寒暖差が激しく、風邪引きとギックリ(腰や背中)が多く見られました。

●風邪の脈

 11月は、東洋医学では「陽消陰長」といって温かい日と涼しい日を繰り返しながら、だんだんと「陰」が強くなり、寒くなるとともに、気温の日格差も大きくなります。当然、肺の負担は増加していき、体温調節も難しいので、やはりしばらくは風邪に注意です。

 風邪と言えば、以前、脈診の師匠が、『風邪の脈を確認して、風邪だねと言って治療するでしょ。治療が巧くいって風邪症状が出ないと、次のときに「先生、風邪じゃありませんでしたよ。」って文句言われるんだよね。逆に風邪の勢いに治療が追っ付かなくて症状が出ちゃうと、患者さんは「先生流石です。やっぱり風邪でした!」って嬉々として報告してくれるんだよ。全く理不尽だよね。』と言っていたのを思い出しました。肩や首の凝りが辛くて、と来院される患者さんの脈をとって、右の脈より左の脈が強く、浮いているのを確認すると、表寒もしくは風熱という脈で、症状がなければ、風邪の入りかけだなと思うわけで、特に11月7日(木)の立冬を過ぎてからの風邪はこじれ易く、喉の痛みや咳がぐずぐず長続きしたり、高熱が出て、気管支炎、肺炎など重い症状で苦しむこともあるので、ちょっと脅かし気味に忠告するかもしれませんけど、忠告通り悪化しなければて治療が上手くいったと納得してもらって文句は言わないでくださいね(笑)。

●今の流行風邪と対策

ちなみに、現在東京では、上気道感染症として、新型コロナ以外にマイコプラズマ感染症が流行っているようですが、そのうち5%くらいがマイコプラズマ肺炎になります。細菌性で、間質性肺炎ですが、長期化して繊維化することはなく、肺炎にしては割と元気で一般状態も悪くないことが特徴です。体力があれば高熱状態は自己免疫には有利で、熱で体内に大量に発生する活性酸素はウィルスを破壊してくれるので、安易に解熱薬で熱を下げない方がいいです。ただし、身体自体も傷つけてしまうので、この場合はビタミンCを大量(1日3グラム程度)に摂るようにしましょう。

●免疫力とビタミンD

くしゃみ・鼻水・喉のイガイガなど通常の感冒症状は夏より増えている感じで、このところ気温低下、空気の乾燥、日照時間の減少と、免疫力が低下し感染しやすくなる環境にしっかり移行しつつあります。

このうち日照時間の減少と免疫力低下についてですが、これにはビタミンDが関係しています。皮膚にあるビタミンD3前駆物質に紫外線が当たることで、活性型ビタミンDに変わり血中濃度が上がるのですが、よく知られる骨を丈夫にする働きだけでなく、体内に侵入したウイルスや細菌などに対して、過剰な免疫反応を抑制し、必要な免疫機能を促進しながら、感染症の発症・悪化の予防にも関与します。仕事柄、引き籠りがちの鍼師もコロナ禍での摂取した時の経過が良いように感じたため、冬期はちょくちょく飲んでます。

●喉・気管支の対策

今夏、装着率の下がったマスクは、冬場は乾燥して冷たい空気を直接吸わず、喉や気管の温度や潤いを保つため有難さが増します。喉や気管支が弱いは、マスクを湿らせて活用したり、体質改善として、呼吸器に潤いを持たせる柴朴湯(さいぼくとう)はお薦めです。運悪く風邪を引いてしまい、喉の痛みや腫れに咳・痰を伴う場合は、漢方薬では銀翹散(ぎんぎょうさん)、食べ物では梨やユリ根、銀杏も鎮咳作用があり、大根おろしも効果的です。予防的にツボ刺激として、手の人差し指の付け根にある「二間」の温熱刺激が喉の熱や鼻粘膜の炎症に有効で、鎖骨の外下方にある「中府」「雲門」のマッサージも気管支炎・肺炎を防ぎます。

●早めの腰対策

急な冷え込みで現時点でも多い腰痛ですが、腰が最も影響を受ける本格的な冬に向け、腰痛や腰重を拗らせないために、今の時期からツボ対策として、「風市」(大腿部の外側面で、まっすぐに立って手の中指先端が当たるところ)というツボを、衣服の上からでも揉みほぐすようにしましょう。

2024年7月

 6月はお隣の浦安で8年ぶりの浦安三社祭が行われて、鍼師は見に行けずシクシクでしたが大盛況だったようです。「マエダ、マエダ」と前に進まぬ神輿を担いで、漁師町の祭り命の方々は燃え尽きてるんだろうなと思っていたら、その後コロナも大流行したそうで、燃え尽きにコロナはキツイぞ、と心配しております。

 さて、例年、春の陽気の影響による自律神経失調を5月の穏やかな気候で調整するところが、今年は4月後半から雨天も多く、自律神経失調を引きずったり、梅雨時期の神経痛・関節痛が前倒ししていたりと、6月も体調不良の方が多くおられました。実際の梅雨入りは、関東甲信越で6月21日と記録的に遅くなりましたが、どうも7月は梅雨らしい天気が続くこともなく、湿度だけは上昇して不快指数はマックスになり、早々に梅雨明けして夏に突入しそうです。やれやれ。

 夏と言えば、「熱中症」と「冷房病」ですが、先日は、東京消防庁管内で33人も熱中症で救急搬送されたようで、今月は熱中症について。

 急激に気温が上昇すると発生する熱中症。人間の自律神経は暑さに対しては対応力がかなり劣り、対応出来る温度差も8℃までで、それ以上になると四肢の脱力・めまいといった軽度熱中症の原因になります。さらに狂った自律神経のため体温調節が出来ないと急激に体温上昇を起こし、めまい・四肢の痙攣・吐き気といった中度熱中症になり、最終的には体温暴走・意識障害など重度熱中症になり、点滴が必要な危険な状態になります。すぐ出来る救急措置は、保冷剤等で大きな動脈の表出する部位(頸、脇下、鼠蹊部)を冷やし、食塩水やスポーツドリンク少しずつ摂取することです。それと中度以上では、内蔵にダメージを受けるので、お腹は冷やさない様(逆に温める)にし、直ちに救急車です。

 予防としては、

  1. 汗腺を鍛えて夏モードにする。(10日間毎日、大量の汗をかくことで、体温が上昇すると同時に、全身からダッと汗をかき、熱放散してスッと汗が引くエクリン腺中心の発汗の獲得が出来ます。)
  2. 適切に水分補給をし、脱水に気をつける。(一度の水分補給は口に含む程度にし、20~30分毎にこまめに摂取するのが理想です。高齢になると、喉が渇くという感覚が鈍くなってきますので、特に注意です。)
  3. 睡眠不足は、発症リスクを上げるので寝不足注意です。

また、先月も触れましたが、体内の水分調節機能を整える「五苓散」という漢方薬は、熱中症の治療・予防、さらに温泉の湯当り等にも使えて便利です。

7月は、後半からオリンピック・パリ2024が開催と楽しみなイベントもありますが、前半は東京都知事選挙。立候補者56人というお祭り状況に、昨今のモラル低下を感じたり、56人もいるのに「この人に託したい」という人がいなくて、なんだかなぁ〜と嘆息する鍼師でした。

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