7月後半から最も暑い数週間が到来しましたが、熊本では最大震度7の地震が7月28日午後4時半ごろ発生し、10年前の大地震を超える大地震となりました。現時点で34人に上っている亡くなられた方々には謹んでお悔やみ申し上げます。被害の大きい地域では、停電により暑さを回避するために車中泊せざるを得ない状況になっており、心身ともに大変なことと思います。なんとか熱中症にならないよう気を付けていただきたいです。
さて、先日もあったのですが、夏場には、特に高齢の方で、数時間から数日という短期間に急速に足がパンパンに浮腫むケースがあります。一見水分の取り過ぎに思える浮腫みなのですが、実は逆に脱水です。病名は急性腎不全で、腎臓への血流が減少し老廃物がろ過されずに体に蓄積して腎炎を起こし、糸球体自体が傷付くことで腎臓の機能が低下し引き起こされます。腎臓への血流低下の一番の原因は脱水。だから夏場多いのです。血圧がそんなに高くないのに降圧剤を服用して低血圧になったり、頭痛等でロキソニンなどの非ステロイド系の消炎鎮痛剤を多用している人はさらにリスクば上がるので要注意です。とにかくマメな水分補給を心がけましょう。ちなみに、大量の汗に塩分などの電解質補給を怠ると、血中の塩分濃度を下げない反応として体が水分を拒否することがあります。自発的脱水といいますが、これも気をつけましょう。
急激に猛暑となり、始めは身体が付いていけない程でしたが、これからは徐々に暑さにも慣れてくるはずです。しかし、これから2ヶ月は暑さが継続するはずで覚悟が必要です。長引く暑さは、じわりじわりと心身消耗して夏バテになります。夏バテで影響を受けるのは、第一に消化器系で、腹部が張る、下痢、胃に由来する下肢の外側がだるくなる、などが出てきます。そして食欲不振になると「あれ食べたい、これ食べたい」は「あれやろう、これやろう!」に直結しているため、倦怠感・無気力といった心身症状にも及びます。さらに進むと、動悸や心臓の痛みといった循環器系(特に心臓)の不調に至ります。出来れば第一防衛線の消化器系で消耗を食い止めたいものです。
で、胃の養生ですが、まずは、しっかり空腹時間を作る事が大事。特に夜寝る前の食事は控えることで胃は余裕を保てます。それでも暑さの影響で胃の運動不全になった場合、これに対するツボ療法としては、ファーストチョイスで「足三里」。胃酸過多気味の場合は「足三里」に代わって「陽陵泉(膝外側の大きな骨の下)」を、消化不良で下痢気味の場合には「百会」が有効です。漢方薬としては「六君子湯」。主成分の一つビタミンPが、「グレリン」というホルモンの分泌を促進し、食欲増進・運動能力アップにつながります。ストレスが胃痛にきやすい人は、胃が知覚過敏になっています。これには少量(胸やけしない程度)の唐辛子(カプサイシン)を長期服用するのが有効です。胃痛がなくなるだけでなく、過敏性大腸炎にも効きます。
さて、夏は、体内のこもった熱を取り除く「陰」の食べ物、いわゆるトマト、きゅうり、なす、といった夏野菜を身体が欲しますが、食べ過ぎは禁物。冷房の冷えと相まって、冷えや気怠さを感じたら生姜と一緒に摂るなど工夫しましょう。先月紹介した「苓姜朮甘湯」を服用もお薦めです。また、ニガウリ・セロリ・ピーマン・パセリ・グレープフルーツなどの苦みのある食材は、夏の「水毒」にたいする食養生としても、心臓を癒すためにも有効です。心臓やストレスに拠る心身疾患に対しては、「労宮(手のひらの真ん中)」や「郄門:ゲキモン(前腕内側のど真ん中)」のツボ指圧も試してみてください。
先日、いつも元気で、大抵は働きすぎて肩こりで来られる患者さんが、暑気あたりした後、胃腸にきて、吐いて下して、ゲッソリ消耗して来院されました。元気な人が珍しく急に苦しむ病を鬼の霍乱(かくらん)と言いますが、現代でいう急性胃腸炎やコレラなどが該当するようです。このケースも、高温多湿で冷たい飲み物やアイスを結構連続して胃に入れて、食欲が少し落ちたところに、食べ物が傷んでいて胃腸炎を起こしたらしく、そりゃ仕方ないねという経緯でした。お腹や腰上、足三里をじっくり施灸し、回復をみましたが、皆さんも気をつけてくださいね。熱が篭った感じがする時に単発で冷たいものの摂取で冷ますのはアリですが、連続やがぶ飲みは厳禁です。人間は頭が熱いと全身が熱いと錯覚してしまう生き物です。しかしながら、お腹や足の温度を手で確認すると、結構冷えていることがあります。きちんと確認して冷えによる機能低下を防ぎましょう。
さて、今年もすでにエアコンなしで室内熱中症死亡のニュースが入ってきていますが、体力がなく、暑さに鈍感な高齢者はエアコンを活用すべきなのですが、寒がって嫌いな方も多々おられ難しいですね。特に熱帯夜が続く暑い季節は、脳をクールダウンしてから眠るのがおすすめです。やり方としては、部屋を涼しくして鼻で腹式呼吸です。脳の自律神経の中枢はちょうど鼻腔の上にあるため、鼻呼吸によって自律神経中枢が冷やされることで自律神経機能が回復し、また、吸う息の倍時間をかけて息を吐くようにすると副交感神経優位になり睡眠の質の向上につながります。
ただ、エアコンの影響を受けすぎるのも問題です。夏はもともと体内熱を放出出来るように皮膚の毛穴が開きがちで、寒さに対しては無防備で、冷房によりストーンと深部に冷えが進行してしまいます。
ちなみに、夏は冷房のせいで冷え性の素地を作りやすい季節でもあります。冷えが進行するとどうなるのか?まず、末梢循環の血行不良(東洋医学では「血虚」や「瘀血」)を引き起こし様々な神経・関節などの痛みの元になります。また余分な水分の停滞(東洋医学では「水毒」と呼びます)を引き起こし、頭痛・肩こり・腰痛・生理痛等が慢性化します。冷えが胃腸機能に及ぶと消化不良・慢性的な下痢・意欲の低下もおこります。冷えがちで低体温化した身体が常態化すると免疫機能低下からガンにもなりやすくなります。さらに、深く進行した冷え性には、身体を温める陽気と身体を沈静化する陰気の分離を引き起こし、(冷え)のぼせ・ほてりといった症状を呈するものもあります。赤ら顔でいつも顔に汗をかいてハンカチ・タオルが手放せない人、この状態が長期化すると、クモ膜下出血、脳溢血、心筋梗塞などに襲われます。まさに冷えは万病の元ですね。
どうしても職場環境等で冷える場所から逃れられない人は、「夏から始める冷え性対策」です。日常生活では、第一に下半身浴+「三陰交」のツボ刺激を1分間。第二に「水毒」に対する食養生。ニガウリ・セロリ・ピーマン・グレープフルーツなど苦みのある食材で、身体の余分な水分を取り去るです。さらに積極的な対策としては、末梢循環を鍛えておく方法です。①冷たい水と熱いお湯を1分毎に交互に7回繰り返す「冷温浴」と②仰向けに寝て手足を垂直に上に挙げて2分間ブラブラさせる毛管運動(ゴキブリ運動)は効果的です。3ヶ月頑張ると体質が変わります。

