5月に爽やかな気候はもう望めなくなってきたのか、今年の5月も初夏のような日差しの日と、梅雨の走りで梅雨っぽい日が交互に来るような一か月で、下旬は連日の真夏日と、本来調整期間となるはずの季節がちょっと微妙で、春の自律神経の乱れが尾を引き、不定愁訴や風邪、梅雨の前倒し的な神経痛とかが多く見られた一月でした。
鍼師の妻も、4月末に実家の義父の世話に行って帰ってから不調で、
妻「実家にネズミが入り込んで糞だらけなのを掃除してから調子悪い」「ネズミは齧歯類だからハンターウィルスかしら?」
鍼師「そのウィルスは日本に入っとらん(心の声)」
妻「きっとハンターウィルスよ!」
鍼師「…豪華客船で貰ってこい(心の声)」
というコントをやっておりました。
今年は沖縄が平年より早く5月上旬に梅雨入りしましたが、九州から東北にかけては6月中旬と平年より遅い梅雨入りになる見込みとのこと。本格的に梅雨に入ると、多湿のため、身体に水分が停滞し、熱が放散しにくくなります。体感的には、ジッとしていると寒いのに、少し動くと暑い感じです。この停滞した水分は、朝に顔をむくませ、夕方には重力で下がって足に靴下の後をガッツリ付けます。東洋医学で言う「水毒」の状態です。これに梅雨寒や気圧の低下が加わると、関節痛や神経痛・古傷痛が目立つようになります。これは急激な気圧の低下で体液成分が変化することと、冷えにより体表の血管壁が収縮し、痛みの受容器を刺激することによって引き起こされる痛みで「気痛」と呼ばれます。応急的には温めることが一番です。また、湿気は消化系統である「脾」に影響が出ると、吸収力も蠕動運動も低下し、お腹が張ってもたれ気味。尿も大便もすっきり出なくて急に下痢・腹痛を起こすこともあります。
これらの状態には、まず水分の摂取管理。特に血液ドロドロの対策意識が強過ぎる方は、この時期水の摂り過ぎが目立ちます。水分を摂るタイミングは「のどの渇き」だと思いますが、水分の摂り方は、冷たいものをガーっと飲むのは駄目です。少ない量から出来るだけ常温以上で口に含み、唾液を混ぜてゆっくり飲みます。実は、のどの渇きを止めるのは、水ではなくて唾液です。唾液は自前で作れる最高の胃腸薬とも言われ、炭水化物の消化はもちろん、殺菌作用で虫歯や歯槽膿漏の予防にもなり、胃酸の中和により逆流性食道炎の予防にもなります。そして、のどの渇きを抑えることで、水分の摂り過ぎを抑制します。噛む事でよく出るようになるので、食事では一口30回を目標に、よく噛む習慣を身につけましょう。当然消化も助けます。
次に水捌けの改善。多湿以外でも身体から水が抜けにくくなる要素は塩と砂糖。入院した時に不味いと感じる病院食は減塩をしていて味が薄くなっているためですが、入院中に余分な水分が抜ける経験をする方が一定数居られます。塩分より問題なのが糖分。東洋医学では甘いものを摂りすぎると使われない過剰栄養素が溜まり、水と絡んで「湿」となり、淀みや滞りの原因になると考えます。滞りが続くとなんとかそれを解消するためにその局所に熱が発生し、これが湿熱です。関節炎や皮膚炎にもつながります。
糖分に関しては、水捌け以外にも、血糖値スパイクという問題があります。「疲れたときには甘いものを!」と常識のように糖分の補給するのは実は間違いで、補給後疲れが取れたとテンションが上がるのは、急速に血糖値が上がる短時間のみで、その後反射的に膵臓からインシュリンが大量分泌され、血糖値は反転して一気に低血糖状態に陥り気怠く眠くなります。さらに低血糖を危機的状況と判断する副腎は、ストレスモルモンであるステロイドを分泌しますが、これが続いて副腎疲労に至ると、「疲れが抜けない」『気分が落ち込みがち』「集中力が持続しない」「偏頭痛がする」「睡眠の質が悪い」「あまり食べていないのに太る」などの「うつ」的な症状に陥ります。思い当たる症状のある方は、騙されたと思って1週間程、砂糖を中心とした甘い飲食物をカットしてみましょう。きっと違いが出てきます。それでも甘いものは止められないという方(分かります。甘いものって美味しいですから)、耳の飢点というツボで欲求を少々押さえられますから、ご相談ください。
最後に、発汗能力の強化。体温調節に良い発汗とは、体温が上昇すると同時に、全身からサラッとした汗をかき、熱を放散させるとスッと汗が引いて汗腺が閉まる、エクリン腺中心の発汗です。肩甲骨の内縁が強張ってくると、汗が出にくいので、これをもみほぐしておき運動しましょう。運動が苦手な方は下半身浴などで汗を出す訓練です。当初はアポクリン腺中心の発汗で、ベタッとした汗が汗腺を塞ぎ、熱も放散せず、体力も消耗しますが、1〜2週間毎日、大量の汗をかくことで良い発汗を獲得できます。夏に向けての熱中症対策にもなりますよ。さらに発汗後牛乳を飲むと、ミルクプロテインが血中のアルブミンに変化し、血液量を増やしてバテにくい身体を造るそうです。
ツボ療法としては、先月書いた「足三里」「中脘」「少海」の刺激を継続し、食養生としては、利尿作用を高め水分代謝を改善するハトムギ、小豆、緑豆。脾胃を温めて、発汗を促すショウガ、ネギ、花椒が有効です。食べ方として、普段は胃に優しい暖かくて消化の良い食事を心がけて胃を休め、何日かおきにエネルギー効率の良い、精の付く食べ物(鰻や焼き肉など)を食べるというのも良しです。鰻にはビタミンBやミネラルも豊富に含まれています。「アレ食べたいコレ食べたい」の食欲は「アレやろうコレやろう」の意欲に通じるので、食欲を落とさず、美味しい食事が継続できるよう養生しましょう。また、漢方薬では、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)が消化吸収を助けながら、余分な水分を取り除く作用があり、熱中症で多用する五苓散(ごれいさん)も水分代謝改善で効果的なので、持っておいて損は無いでしょう。

